Letters

Letters by Yuriy Kusanagi

書評『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』

堀江貴文氏が言っていたことだけど、彼は本を読む代わりに時間短縮のため書評だけ読むことも多いらしい──結論から言うと、この本を熟読する優先度はそれほど高くない。

価値のある本というのは、その本を読んだことによって、現実世界での自分の行動が変わる本だと思う。

 

『年収は住むところで決まる』というセンセーショナルなタイトルの割に、本書に書かれていることはいたって地味な、長年に渡るデータの蓄積から導き出された結論だ。

 

 

イノベーション都市とは

 

シリコンバレーはアメリカにおけるイノベーション都市の代表格だ。

 

高度な教育を受けた労働者はシリコンバレーのようなイノベーション都市で貿易可能(他国との競争に晒される、という意味)で大きな経済効果を生む仕事をする。

その結果、シリコンバレーでは低賃金労働者にもその恩恵が行き渡り、結果として都市全体が経済的な好循環の波に乗る、というのが本書の大まかな主張だ。

 

 

東京近郊の場合

 

この主張に対して、僕は異議を唱えるつもりはまったくない。

むしろまったく正しいことを言っていると思う。

 

例えば、東京都には高給の雇用がたくさんあるけど、神奈川県、千葉県や埼玉県など周辺各県では同レベルの雇用の数はぐっと少なくなる。

一定水準以上の稼ぎを得たいなら、どうしても都心部に出てきた方が有利だ。

 

 

教育ですべて解決できるわけではない

 

たしかに、高卒者よりも大卒者の方が賃金水準は高いのかも知れないけど、僕は本書の教育史上主義を少し離れたところから眺めている。

 

教育が賃金水準に決定的なインパクトを与えていたのは、数年前くらいまでのことなのではないだろうか?

現在では学校教育は既に形骸化していると僕は考えている。

 

高学歴ワーキングプアという言葉も聞かれるようになっており、日本国内では「大学卒プレミアム」が一部の伝統的な大企業以外ではあまり価値を持たなくなってきているように思う。

 

 

都心に引っ越そう

 

「大学卒プレミアム」の価値が下がっているとすれば、余計に「住むところ」は大事になってくるわけで(住所がど田舎なら高収入はかなり難しい)、それは労働者の教育のレベルを全国的に上げたところですぐに解決するような問題でもない。

 

このあたりのことに関しても本書の中で対策がいろいろ提案されているけど、日本に住む僕たちができることは都心部(に近い場所)に移り住むことしかなさそうだ。

ビジネスだけじゃなく、アートやエンターテイメントなど、何をするにしても都心部は強い。

 

東京では都心3区(千代田区、港区、中央区)への人口流入が加速しているらしい。

この傾向は今後さらに強まっていくと思う。